忘れられないキスをして

俺たちは、連れの女を通じて出会った。派手な女と清楚な女。どこに接点があるのか想像もつかないほどタイプが真逆の二人は、家が隣同士という、幼なじみってやつだった。
から始まる海賊さんのお話を書きたいんですよね
彼女同士が幼なじみでめちゃめちゃ仲良くて、ダブルデートとかするやつ そして互いに魂から欲する相手だと知ってしまうのだ

彼女が化粧直しやらに行ってる間海賊さん二人で外で待ってるけどお互い無言だったらくそもえる キャプテンはだるそうにスマホいじってるしサブはたぶん通りかかったおばあちゃんにニコッて笑いかけたりしてる ウッ好き


 
「彼女の誕生日?…どんなものをプレゼントしたらいいかって?俺が知るわけねーだろ俺が女を物で喜ばせるタイプに見えるか?」
「だからあなたじゃなくてあなたの恋人に聞きたいんですよ。連絡とってもいいですか?それとも彼女が他の男とLINEするだけで気分を害すタイプ?」
「はあ?勝手に聞きゃいいだろそんなもん」
ってその場では言うけど、彼女がサブと仲良くなって、自分が知らない話とかしてんのに地味にイライラしちゃうキャプテンかわいいなあと思う 自分は嫉妬深いタイプではないと思ってたけどこのへんから調子狂ってくる感じがよい サブは特別なのだ

キャプテンは最初彼女に妬いてると思って戸惑ったりもするけど、次第にサブがサブの彼女と一緒にいるのを見てはイライラし始め、俺コイツのこと生理的に嫌いなんだと勘違いする行程を挟み、最終的に全部答え合わせすることになるんだな あああのとき苛ついてたのも全部こいつが好きだからだ、みたいな

思えばぜんぶが恋だった


 
「昨日、見たぜ、おまえが彼女にキスしてるところ」
「…それで?私なんかこの前あなたが私の家のトイレで彼女とセックスしようとしてたのを見ましたけどね」(※宅飲みしてた)
「いや、全然違うキスの仕方するんだなと思って」
「…っ!?」

「あのときのあれは忘れる約束でしょう?」
「約束?忘れろっておまえが一方的に言ってきただけだろ」
「だってあれは…酔った勢いの過ちだったんじゃないんですか」
って急に弱っちゃうサブかわいいし無理
今まで品行方正に生きてきたけどキャプテンとキスしちゃって死ぬほど悩んでお互いに忘れようと(一方的に)約束し
キャプテンも何食わぬ顔でいるからあれはやっぱり一時の気の迷いというか酔った勢いのおふざけというかこの人にとっては大した意味がないことだったんだと自分の中で完結するもキャプテンはしっかり覚えてるっていうね

「…キスの仕方が違う?なにとお比べになっているのかわかりませんが」
「なんだよ、おまえの中ではなかったことになってんの?俺と―」
「記憶にございませんね」
「あなたのキスが忘れられないと言われたことは腐るほどあるが、記憶にないは初めてだな」
ますます忘れられなくなってしまう

「せっかくだから今思い出させてやろうか?」
「…なるほど、あなたは人をからかって楽しんでるんですね」
「俺はいつだって本気だよ」
「よく言う。すべては遊びのくせに」
って言われてはははって笑って応えるけど、もう一度キスしてやりたいと思ったのは本気だったんだけどな、って後から心の中でつぶやいて、ああ本気なんだ、って自覚しちゃうこのかんじ

「俺はしっかり覚えてるのにおまえは忘れるなんてフェアじゃないだろ?」
「だからあなたにも忘れろと言ったんです」
「忘れられないんだよ」
「…はあ?」
「こんなこと俺に言わせたのも初めてだ」
おまえは俺を覆す


 
そんでなんかキャプサブ二人で会うことも増えて、キャプテンはグイグイ口説いていくし、でもサブはまともに取り合わず、ある日二人で飲んだあとベッドに入ることになり…的な…
サブは口では抵抗してるけどなんやかんやで一線を越えてしまって…的な
「恋人がいるんです、私には」
「知ってるよ」
「浮気でしょう?これって」
「そんな大ごとじゃねえだろ。一夜の過ちってやつだよ。終わったらさっさと忘れればいい」
「なんのためにこんなこと、」
「俺のため」
って抱かれるんだよ

それで次の日に「彼女と別れます」とかサブが言い出して
「…は?」
「こんなことしておいて彼女に合わせる顔がないですから」
「いや、なんでだよ、んな大ごとじゃないって言っただろ。別に俺と付き合えとかそんなつもりもねえし、心配すんなってもう二度としねえから。だいたい無理やりヤられたようなもんだろ、おまえは何も…」
「私の問題です」
ってサブが彼女とほんとに別れちゃって、これまで4人で会うことも多かったのにさっぱり会う機会がなくなっちゃって、
キャプテンとしてはサブにそんなことをさせるつもりなかったんだよね
1回寝たら満足するんじゃないか、今はただの興味本位で惹かれてるだけで一度味を知れば飽きるんじゃないか、って思って試してみただけで
(すがるような気持ちだったのかもしれないと思うとまたたまらない)

サブが彼女のこと大切にしてたのも知ってるし、あんなに誠実な男に浮気してしまったって自責の念を抱かせちゃって
そんでキャプテンも彼女と別れて少し期間をおいてサブに会いたいって連絡いれて
「女と別れてきた」
「…なぜ?」
「おまえが浮気とか言うから。いろいろ考えて」
「私のせいですか?だってあれは事実として浮気だったでしょう?」
「浮気だったんだよ、おまえに出逢ってから全部が」
おまえ以外のやつと寝るのも、同じやり方でキスをするのも、おまえ以外のやつに時間を消費するのも。
「俺のすべてはおまえに費やされるべきなのに」
俺はおまえのものなのに、


 
「いつから自覚してた?」
「なにを?」
「俺を…その、なんだ、そういう…」
「好意の自覚?」
「そう」
「…忘れられなくて」
「?」
「あなたのキスが」
「………へえ」
うれしそう

基本絶対的自信家で俺様至上主義だけど、今まで本気で人を好きになったことがなくて好きな人に否定されたら死んじゃいそうな気がしてるから話題選びが慎重なキャプテンすきです