完璧な紳士

「来週解説の仕事があるので今日はエッチはなしです」
「はいはい」
「…いやに理解がありますね…」
「そりゃマラドーナが俺よりフットボール優先しても異論はねえよ」
「(マラドーナ…?)あの…普段の配信だったらべつにいいんですよ、今日は喉の調子が悪くて、って言えば…そもそも自分の配信のときはあんまり気負わないし、プレーに集中してるときはしゃべらないし…でも解説の仕事となるとやっぱり喉のコンディションも大事じゃないですか?アーサーさんとエッチすると普段使わないようなところから声が出て…たまに次の日とか枯れちゃうんですよね。それで…」
「わかったって。解説の仕事って生?俺も楽しみにしてる」
「………………だめ!アーサーさんの理解がありすぎていたたまれません!もう少し何かありませんか!?『俺とゲームどっちが大事なんだよ!』とか!」
「そう言ってほしいのか?」
「いえ言われたら困ります」
「だろ」
「でも言われなくても困ります。アーサーさんばっかり私に合わせている気がします…あっ次のお休み、久しぶりにクラブに行きませんか?お酒飲みましょうよ」
「疲れるからいい。俺が遮蔽物にならないと油断も隙もねえからな」
「でも…アーサーさんは私の仕事にも理解があるし、逢うときも配信の時間を避けてくれるし…」
「いいんだよ。一分一秒の世界で生きてるおまえを今日なんかもう1時間17分も占領してる。じゅうぶんだろ」
「あ~~~~も~~~~~~!!」
なんで付き合い始めたとたんこの人こんなに完璧な紳士になるんだ~!!!!

俺以外見るな!でも俺だけを見るな!とか言ってたわがままヤンキーはどこいったんだ

「でも合わせてもらってばかりでいたたまれないんです。なにかできることはありませんか?なんでもします」
「へーそんなこと言っていいんだ?」
「男に二言はありませんとも!」
「じゃあ次逢うとき楽しみにしてる」
「うっ…はい」
いちいち紳士的に返事しないでほしい