ありんす

「『あります』が『ありんす』、『ございます』が『ござりんす』」
「『いりんせん』は『いりません』?」
「そうそう、そうです。…そういえば初会のときも私がなにを言っていたかわからなかったのですね」
「いやあの猛烈につれない態度でなんとなくは察してた」
「それはごめんなんし」


 
「アーサーさんはおゆかり様」
「なにそれ」
「なじみの客のことです。ご贔屓にしてくださるお方」
「へー影で俺をそうやって噂してるわけだな」
「悪い噂はありませんよ。もてるお方と評判で」
「持てるお方?」
「花魁に丁重にもてなされるほどのいい男」
「ははは光栄だ。他にどんな噂をしてる?」
「気になりますかよその評価が」
「いやおまえの評価が気になるよ」
「……丁重にもてなされておいてなにをおっしゃるのでしょうね」
野暮なお方だなあ
(なんかほどほどに仲を深めたあとの二人が廓詞講座してたらかわいいなって話)

「この前座敷で小さいのが『あの異人さんは花魁の間夫さん』って言ってたぜ」
「…声が大きいと注意しておきます」
「いやいいんだけど全然。異人さんは俺だろ、花魁はおまえで、間夫さんってなんだろうと思って」
「なじみの方のことですよ」
「?『おゆかりさん』とはどう違うんだ」
「…………」
こっちが本気だってことや